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カルビー 攻め・守りに強い理由 経常利益・総資産・売上高・従業員の増加割合の関係性 

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今回は、ポテトチップスなどのお菓子メーカー、カルビー株式会社を取り上げてみました。少子高齢化と人口減少に直面している日本企業のうち、子供が主な購買層であるお菓子メーカーはいかに戦っているのでしょうか。

2012~2016年3月期までの5年を分析してみました。

カルビー分析

企業力総合評価は、157.41P165.05P172.61P172.28P172.99Pと推移しています。170P台を安定したようです。資産効率以外のすべての親指標が右肩上がりか天井値をつけており、着実な成長軌道にあります。

営業効率(儲かるか)は天井値になりました。売上高も2012163,268百万円から2016246,129百万円へと4年間で150.75%増加しました。売上高経常利益率も7.65%から10.79%へと着実に改善しています。資本効率(資本の利用度)も同じ軌跡です。

生産効率(人の活用度)が急激で同じトレンドでの改善を示しています。売上は先に示した4年間で、150.75%の増加に対し、従業者数は5,771人から6,978人へと、120.91%の増加に留まっています。1人当たり売上高も1人当たり利益も伸びているようです。

資産効率(資産の利用度)は右肩下がりの悪化を示しています。この指標は売上と資産の関係を示していますから、増収している中での悪化であれば、それ以上に資産が増加しているのでしょう。

流動性(短期資金繰り)は急改善ののち、天井値になりました。

安全性(長期資金繰り)は天井値で高位安定しています。

増加率グラフ

上グラフは、経常利益、売上高、総資産額、総従業員数の2012年比です。見事なグラフです。経常利益の伸び>売上高の伸び>総従業員数の伸びが4期成立しています。営業効率、資本効率、生産効率が改善するわけです。総資産額の伸び>売上高の伸びも4期成立していますから資産効率は悪化する筈です。また、経常利益の伸び>総資産額の伸びから、投下された資産は利益を生んでいるので、投資も成功していると言えます。この4指標のグラフの動きは、高度な計数管理ができている会社にしか見られません。増収を狙う攻めの姿勢はとれても、この大小関係を維持しながら達成できる会社が多くありません。

売上と資産のグラフ

総資産が伸びていますから、その内訳の一つである有形固定資産を確認してみました。
上グラフは、各地域別の有形固定資産額の推移の棒グラフと売上高の折れ線グラフです。日本の有形固定資産は2014年まで減少していましたが、2015年から反転増加しています。売上高も急増しています。人口減少、少子化が進む日本での投資、売上ともに増加ですから意外です。

シェアの拡大に成功したのでしょう。

北米、その他アジア地域の有形固定資産も増加しており、投資しているようです。売上高は2期しか開示されていませんが、今後売上は、急速に増加するでしょう。

なぜなら、縦軸は2軸あり、プロットされた数字は違いますが、日本の有形固定資産と売上高が同じ高さなのに対し、北米、その他アジア等は有形固定資産が高く、設備に対し売上が少ないことを意味します。

中国地域は撤退が明白です。

まとめ

カルビーの数字の動き方は、増収を狙う体制は出来上がっていると言えます。このような体制で攻めの姿勢を行うのが理想です。しかし現実には同じ増収でも、利益を生む体制がなく、利益減、資産増、従業員増となりバランスが崩れる会社が多くあります。そのような会社は、企業力は改善せず、大きくなった分、その経営管理がし辛くなり、その後大きなリストラを余儀なくされたりします。

カルビーは、足元を固めることを忘れない堅実な経営をされています。

SPLENDID21NEWS第133号【2016年12月15日発行】をA3用紙でご覧になりたい方は下記画像をクリックしてください。

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Picture of 企業評価・経営者評価のスペシャリスト 山本純子
企業評価・経営者評価のスペシャリスト 山本純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
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